艮神社(うしとら)
福山市芦田町下有地
艮神社(うしとら) 福山市芦田町下有地に鎮座する。

祭神は吉備津彦の一柱。
吉備津彦を祀り艮神社と称する神社は備後に多い。
本家の岡山ではどうだろうかと岡山県神社庁ホームページから吉備津彦を祀った神社を検索すると登録18社のうち「艮」を名乗る神社は備後に近い笠岡の1社のみだった。
艮とは鬼門をいい、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると鬼門(きもん)とは、北東(艮=うしとら:丑と寅の間)の方位のことである。
陰陽道では、鬼が出入りする方角であるとして、万事に忌むべき方角としている。
他の方位神とは異り、鬼門は常に艮の方角にある。
鬼門とは反対の、南西(坤 ひつじさる)の方角を裏鬼門と言い、この方角も忌み嫌われる。

・・・と、このように記されている。

水野勝成は福山城の鬼門守護としてその方向に鎮座するスサノオとイザナギを祀った「秋津艮大明神」を厚遇し、これは明治になり艮神社と改称している。
吉備津彦系の「艮」とは明らかに異なる。

吉備津彦を祀った神社は備中一宮吉備津神社がもっとも有名だが、全国に御崎神社もしくは艮御崎神社と称する分社をもつ。
この辺りから艮が神社名になっているのだろう。
吉備津彦と「艮」の繋がりを調べてみようと思う。
なにか方位と関係があるのだろうか。

この芦田町下有地の艮神社は天正3年(1575)5月に下有地鳥奥城主有地美作守隆信が社殿を再建している。
広島県神社誌にはどこから勧請してきたのか記載がないが備後一宮吉備津神社ではないか思うのが自然だ。
明治24年に暴風雨で社殿が倒壊、明治43年に再建している。
昭和4年に近所の寺の本堂を拝殿として移築したとのことだ。
その社殿はすばらしかった。

まず、三間社入母屋造の大型拝殿は桟瓦葺きで千鳥破風が付く。
向拝は軒唐破風で模様が彫られた向拝柱の虹梁型頭貫の木鼻には象の彫刻が施され、身舎と繋ぐ海老虹梁の木鼻には獅子が彫られる。
梁は連三斗が支え中備部分には龍の彫刻が飾られる。
身舎は二手先の出組だ。
本殿は一間社入母屋造で銅板葺き屋根には外そぎの千木と堅魚木が載り千鳥破風が付く。
向拝は軒唐破風。
身舎とは海老虹梁で繋がれ、それぞれの木鼻には拝殿と同じように象や獅子が彫刻される。
中備にも拝殿と同じく龍の彫刻が飾られる。
柱上は台輪がめぐり、組み物は詰め組で尾垂木付きの二手先出組。
縁は三方を廻り奥は脇障子で止まる。
小高い山上に鎮座している。
参道
拝殿
本殿

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